チャイナロビー

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田中角栄と周恩来の認識

過日の朝まで生テレビでも、田中総理〜周恩来会談における、いわゆる「棚上げ論」があったのかを再度検証してみたい。

自民党の代議士は、存在を認めてああないばかりか、国のためであれば、仮に存在した場合であっても、存在の抹消もやむなしとの立場であり、更に、既に時効だとも語っていた。
よくも勝手な事を言うもので、抹消も国民の利益にならないばかりか、このような議論は、日本人として非常に残念なものだと感じた。
言い換えば、世界の常識を外し、自己の利益しか考えないのが日本人の特徴なのだとも思ったものだ。

全く、自民党政権は、世界(米中を中心とした秩序)の変化を見抜く力量も国益が何であるかを考えるセンスもなく、時代錯誤も甚だしい冷戦期のイデオロギーで動いている。停滞していた経済のように20年程以上頭が切り替わらないようだ。

ところで、棚上げ論の存在であるが、間違いなく存在したはずである。

理由は下記の通り。

①中国側の対応が一貫していること。周恩来、鄧小平は同じ内容を表明している。

②間違いなく日本の外務省には議事録が存在する。但し、棚上げ論を契約文書で残す事はしていない。
生き証人も多く存在している。

③外務省は、周恩来が田中総理に「棚上げ」を示唆した際、田中総理が受理しなかったと言い張っているが、仮にも両国のトップ会談である。シカトすることは考えられない。
日中国交正常化のためには、中国国内では、日本との間で領土問題が表面化してはならない状況であった。

因みに、田中総理は帰国後に野中広務氏に電話で棚上げをした事を伝えている。

④更に、田中総理〜周恩来会談の際、領土問題を口にしたのは、田中総理の方である。

日本も中国と同様、日中間に領土問題があると話が進まず、田中総理は中国側の認識を聞いた訳である。

つまり、お互いに領土問題として存在する事を認識していたと言う事だ。

周恩来の棚上げ問答は、正常化樹立という成果と比べると小さな問題であり、田中総理は喜んで受けたはずである。