チャイナロビー

マクロ経済、環境調査、政策提言、産業誘致、事業創出まで幅広い事業をこなす奮闘記です。

日本国民の自覚、政府の自覚

また少し、近代史を遡ってみましょう。


日本は、中国との朝鮮利権を巡っての日清戦争の勝利により、遼東半島、台湾、膨湖諸島の割譲や、沙市、重慶蘇州杭州の解放、日本に最恵国待遇を認めさせるなどしました。

また、ロシアとの間で、朝鮮半島満州での利権を争いが原因とした日露戦争では、満州における全ての権益を手に入れました。

覇権争いに国土を荒らされた中国と朝鮮にとって、言うまでもなく死活問題なのですが、現代に至っても、これらを日本の自衛だと、朝鮮侵略満州占領を合法だとする政治家や評論家がいます。

歴史を知らないのか、道徳観がないのか、日本人として恥ずかしいばかりです。

満州事変勃発のきっかけとなった柳条湖事件(昭和6年9月)をご存知ですね?

当時から明らかになっていましたが、これは、石原莞爾板垣征四郎関東軍による自作自演でした。いかにも稚拙な行動です。

しかし、朝鮮軍司令官林鉄十郎は、兼ねてからの打ち合わせ通り、軍規違反、憲法違反にも関わらず、独断で満州へ進軍したのです。

ところが、当時の若槻内閣は、軍部が既に動いている事を致し方ないとし、それを閣議一致で承認、大元帥である天皇も了承してしまいました。

メディアも、権益を護らんとする軍部の行動を賞賛し、日本国民も盛り上がります。

昭和7年1月には、(第一次)上海事変が起こります。こちらも同様、陸軍の自作自演でした。

天皇は軍部の行動を控えるよう指示し政府、軍部が曖昧な態度をとったため、その後の五・一五事件満州国建国へ繋がります。


一連の事件は、全てが政府、軍部の詭弁であることが分かります。

しかし、恐ろしいのは、現代も全く変わっていないことです。

憲法で保障しているはずの司法も行政も立法府である国会も国民を欺いているとした思えない事件が後を絶ちません。

日本は自らが勝ち取った民主主義ではないためか、本当の民主化は難しいとさえ言われます。

私は民主化の根本は”リベラル”だと思います。つまり、体制に左右されない個人の考え、信念、何事にをも受け入れる社会の寛容さだと思います。

ところが日本は、世間体が一番であり世論迎合(ポピュリズム)により社会が出来上がっていると感じます。

ここで、以前紹介した永井荷風の一説を掲載します。

よ〜く噛み締めて読んで下さい。

断腸亭日乗(永井荷風、昭和11年2月14日付)

(前文略)
余は昭和六、七年来の世情を見て基督教の文明と儒教の文明との相違を知ることを得たり。浪士は神道を口にすれども其の行動は儒教の誤解より起り来れる所多し。

そは兎もあれ日本現代の禍根は政党の腐敗と軍人の過激思想と国民の自覚なき事の三事なり。

政党の腐敗も軍人の暴行も之を要するに一般国民の自覚に乏しきに起因するなり。個人の覚醒ぜさるがために起ることなり。(以外略)

永井荷風の社会批評

  昭和11年に起きた二・二六事件直前、永井荷風が「断腸亭日乗」に掲載した内容です。

(前略)
そは兎もあれ日本現代の禍根は政党の腐敗と軍人の過激思想と国民の自覚なき事の三事なり。

政党の腐敗も軍人の暴行も之を要するに一般国民の自覚に乏しきに起因するなり。
(以外略)

要するに、社会つまり国民そのものがあらゆる面で自覚を持つ必要があるとしています。
これは、2014年現在にも言えることであり、内政、外交、経済全てに当てはまります。

今こそ戦争総括を!

   日本は戦後68年が経過するにも関わらず、ついに戦争総括なるものを行いませんでしたし、行う気配すらありません。

日中戦争、太平洋戦争に関し、侵略だの自衛だのとか、慰安婦南京事件東京裁判などの批評は行いますが、必要な戦争総括とは、太平洋戦争の要因や性格、日中戦争の侵略的要素、東京裁判の正当性などではなく、1910年代以降の日本の政治、財界、学会、メディア、世論そして社会のあり方を問い評価するものです。外因より内因をと言うことになります。


当時は、覇権・軍国主義時代ではありましたが、様々な要因と結果がありました。

謀略による韓国や中国への侵略
経済・外交・軍事・社会的な要素による開戦へのプロセス
戦略・戦術における責任、政治腐敗
情報操作による虚偽伝達
政治の体制、軍部の体制、天皇統帥権の不備
軍部と政治家の資質
戦時教育、軍部の横暴
国益喪失、玉砕や兵力の無駄な損失
終戦機会の、責任放棄、民間人の被害

以上、あげればきりがありませんが、いずれも全く手付かずで放置されたままです。そして、国民への説明、謝罪もありませんでした。

これがないために、靖国問題をはじめとする歴史認識に関する政治家一人ひとりの言動が曖昧で、被害者である中国、韓国から歴史観について指摘されるのです。

韓国国民の感情


日本国民として歴史認識を深く持ち、当時や現在の韓国国民の感情を理解する必要があります。

韓国は、日本の植民地であった故に戦勝国とされず戦争賠償、戦後補償がされませんでした。

慰安婦以外にも数十万の韓国人が徴兵、徴用され、当時の給与不払い、暴力による身体的被害を受けています。

しかし、日本側は、植民地政策、韓国併合を合法とし、日韓基本条約を盾に、未払い給与や個人的補償をする必要がないとしてきました。

日本政府は経済支援として対処しましたが、果たしてそれで良かったのでしょうか?

韓国国民より日本国民への配慮を重視した日本政府の認識は理解できませんし、配慮のなさを感じます。